君への距離
「大丈夫?」

隣で真っ青な顔をしている杏に翼は心配そうに尋ねた。



「……ケンちゃんの、」



「ん?」



「ケンちゃんのヘルメット…」
杏は震える声でしぼりだすように言った。



「ケンちゃんのヘルメット、あたしが壊しちゃったの…

飲み会のあとふたりとも酔ってて…ふざけて二人乗りして駐車場走ってたときに…

ヘルメット落としちゃって…

あごヒモが切れちゃったの…」




翼、
「…杏ちゃん。」


マサキ、
「バカ、それは酔ってた二人とも悪いって!」


リョースケ、
「そうだよ!杏は気にすること何にもないからな!」



アツシ、
「ケンイチはもうすぐケロッとした顔で出てくるよ!」



杏、
「でも、もし…」

バタンッ!


杏の言葉を遮るように手術室のドアが開いた。



中から医者が出てきて、6人の方へマスクを外しながら歩いていた。




アツシ、
「ケンイチは?」






医者は複数な表情を浮かべて首を振った。







「残念ですが…」







そこで杏の意識がぷっつりととぎれた…






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