君への距離
7月になった。



3年生が引退した。



アツシは翼のボールを受けれるようになり、新バッテリーは日に日に成長していく。



相変わらず山下さんと原田さんは練習に出てくる。

翼を見るためだ。






新キャプテンにはセンターのカズさんが決まった。





タクさん、ヨースケさんの2年二遊間コンビも3年生の抜けた穴をしっかりとカバーしている。






翼はというと、

6月末にあった六大野球…つまり新人戦に先発出場し七回まで投げてノーヒットノーランのパーフェクトピッチングをやってのけた。


今や押しも押されぬレッド不動のエースだ。




(あの頃のような優越のある待遇も、立場も今はないけれど…)


翼はふと思う。


(今はただ野球が楽しくてしょうがない。)



(チームというものを意識して投げたことは今までに一度でもあっただろうか?)








翼は、そんなことを考えている自分に少しの恥ずかしさと愛しさを感じていた。





ほんのちょっと自分を好きになった気がした。




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