君への距離
翼は高校では一番バッターを務めていたほど出塁率のいいバッターだった。


この前の新人戦ではピッチャー打順、9番を打っていた。

結果は三打数二安打、一四球。二塁打も打ってピッチャーらしからぬ好打者ぶりを見せた。

「三番か四番、どっちかに入ってくれ!」
試合前日にカズさんが言った。


「僕おっきいの打てないですし…」
翼は謙遜して言った。

「三番!頼む!!」


「は、はあ…」

翼は戸惑っていた。

ランナーが前に出ていられれば翼だってプレッシャーを感じる。


普通ピッチャーにピッチング以外でストレスを与えるようなことはしない。

それを承知の上でのことだからカズさんも申し訳なさそうに頼む。

「チームのためなんだ!よく考えたけどこの打順が一番点がとれると思うんだ!」


カズさんは翼の肩を軽く叩いた。


見た目からは想像もつかないが…


翼の肩には確かにチームの夢が乗っかっていた。






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