君への距離
(カズさんにつなげよう…)

翼はバッターボックスに入りながら次に控えている四番のカズさんを見た。


バッティングに自信がないわけではない。


(この前もできたじゃないか。大丈夫だ…)
翼は自分に言い聞かせる。




ツーアウト、二塁には俊足のタクさん。


ピッチャー振りかぶって、投げた。


バシッ!

ボール


続く、二球目、三球もボールだった。



カウント、ノースリー!翼有利なカウントだ。





四球目はカーブ、翼はバットを当てるだけ。


ファール




五球目

内角低めのストレート!
翼が待っていた球だ。



素直に打ち返した打球はセンターへ、思った以上の飛距離だ。


センターの頭上を越え、フェンス激突!





翼は走った。

全速力で走り続けた。

(この回でバテてしまおうが知ったことか!)

無我夢中という言葉はこういうときに使うものなんだな、と翼は思った。







タクさんはゆうゆうホームへ!

翼は三塁に滑りこんでセーフ!





味方ベンチからみんな飛び出してきてタクさんを迎えた。


「翼、最高!」
リョースケが三塁の翼に向かって叫ぶ。

「ナイスバッター!」杏も翼に向かってピースした。


翼は右手をあげて答えた。





「どんどんいこ―!!」

タクさんがパンパンと手を叩いた。







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