君への距離
続くカズさんはフォアボール。



5番のアツシのレフト前ヒットで翼が生還し、この回二点が入った。



翼は手荒い祝福を受けていた。

ベンチに戻った翼をみんながバシバシ叩いた

マサキ、
「今日のヒーローやな!」

リョースケ、
「翼チャン、惚れるぜ!」
そう言って褒めまくる二人とハイタッチした。


翼、
「あはは、そりゃどーも!」





翼は杏の方をチラッと見た。

一生懸命スコアを書いていた。


ちょっと残念に思いながら腰をおろそうとしたとき、



「ナイスバッティング!」
杏がいった。

「この調子この調子!」

そして笑顔で右手をあげる。





「あ、ありがとう!」
翼が少しはにかんだような笑顔を見せる。




パシツ



翼は控えめに杏とハイタッチした。

あったかいその小さな手の感触がしばらく翼の手のひらから消えなかった。



杏もちょっと恥ずかしくなってきて、慌ててスコアブックに視線を戻した。





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