君への距離
それは突然のことだった。






九回…ここまでパーフェクトピッチングだった翼が最後の回の先頭打者に初めてフォアボールを許したのだ。





それから続けて二人にフォアボール、あっという間に満塁になった。








アツシが翼の異変に気づいてタイムをかけた。


(どうしたってゆうんだ?)
アツシは目を疑った。

それまで涼しい顔をして投げていた翼が真っ青な顔をして冷や汗を垂らしている。


そして何よりも右腕全体が遠くからでも分かるくらいにガクガクと震えている。

一部の観客の中から悲鳴があがった。




「どうしたんだよ!?大丈夫か?」
アツシが心配そうに尋ねた。




翼が左手で右腕をつかむとその場に崩れるようにしゃがみこんだ。




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