君への距離
試合終了。



結局、その後一点とられはしたものの何とか逃げきった。





ベンチに戻ってきたメンバーたちが翼のまわりに寄ってきた。

「大丈夫か?」

「病院連れてくよ!」
「動ける?」

みんな本気で心配していた。





そんな様子を見て、ベンチの前を通りすがった相手チームの二人組がぼそっと言った。

「ガラスのエースやな~」





飛び出していったのは杏だった。

持っていたみんなのためにバケツに作って冷やしておいた麦茶を、

思いっきりぶっかけた。



みんなは目をまるくしている。


翼もびっくりして振り返った。




「つめ、冷たっ!」

「はぁ―?何するんすか?」

二人は仰天して杏を見た。



「なんでそんなヒドイことゆうのよ!」



ベンチのみんなも仰天して飛び出してきた。


「翼くんがどんな想いで投げてると思ってるの!」



今にも手が出てしまいそうな杏をシオがおさえながら言った。

「うちのエースにケチつけるなんてお前ら今日はそーとー打ったんだろうな?」



「おかしいな~、翼はフォアボールしか出してないはずだぞ?」

アツシも言った。


「実際、キミら負けたんちゃうの?うちの男前エース君に!!」
マサキも飛び出してきた。



相手チームの二人は怒りに震えながら、それでも返す言葉がなくその場から走り去っていった。







翼は呆然とそれを見ていた。





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