君への距離
「あっ、あの…」
後ろに座っていた女の子がシオにいきなり声をかけた。
「はい?」
明らかにテンパる女の子に、シオは冷静に言った。
「どこの学部の方ですか?」
「…経済っす」
「おんなじですね!あたしもなんです。」
女の子は満面の笑み。
「はあ…」
嫌な沈黙が流れた。
「俺もっ、俺も~♪」
式の最中にもかかわらず大声で話しかけてきたのは…
ケンちゃんだった。
ケンちゃんは女の子を無視してシオの隣に無理矢理座って言った。
「サークル決めたかやぁ?」
「えっと軟式…」
「レッド!?」
「あ、うん。」
ケンちゃんは目を輝かせた。
「俺も入るんだっ!他にも1年結構入るって!!」
「へえ~」
「みんないいヤツだったよ!あと…」
「あと?」
「…マネさん、かわいいし!」
「そうなんや~」
「でもな、お前男前だかんなぁ~…。ぜってぇちょっかいだすなよ!な?」
本気で心配そうに話すケンちゃんに、思わずシオは笑ってしまった。
「あっ、てめ!笑うなよ~!!」
『そこ!!静かに!』
マイクで怒られ、全生徒の注目を浴びる二人。
「俺、ケンイチ!お前は?」
ひそひそ声でケンちゃんは言った。
「中塩純、天才サードや!」
「よろしくな、シオ!天才セカンドのケンイチ様って覚えとけ!」
二人はゲラゲラと、しかし小さな声で笑い合った。