君への距離
アパートが近いということもあり、二人はすぐに仲良くなった。



野球の話はもちろん、進路や恋の話までいろいろなことを語り合ったりもした。





「杏を彼女にしたいとか思ってんじゃないんだ。だって杏と付き合ってるなんて言ったら、みんなひがんで冷やかすじゃん?」



「ケン、まだ告ってもないやん!」


「あっほ!想像だっつ―の☆」


「妄想や!!」




ふとケンちゃんが遠くを見つめるようにしてつぶやいた。

「でもさぁ、


本当に今のまんまでいいんだよなぁ…。

みんなでバカ騒ぎしてさぁ、そこで杏も笑ってて…

俺って、マジで幸せモン!!」





そう言ってニヤリと笑ったケンちゃんの顔が今でもシオの瞼の裏に焼きついているかのように思い出される。



同時に、人間なのかも疑うほどの無惨な姿で横たわるケンちゃんの姿も…。




(今のまんま…高望みなんかしてない、ただそれだけを望んだケンが今ここにいない。)





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