君への距離
「シオ?」




翼の心配そうな声でシオはハッと我にかえった。


「…ああ?」


アツシ、
「おいおい、飲みすぎかぁ?しっかりしろよ!」



シオ、
「あ…あははは。大丈夫、大丈夫!」



翼、
「顔色悪いよ?」


アツシ、
「顔悪いよ?」


シオ、
「るせ―!!こんな男前つかまえてよ~」


アツシ、
「最近、男前キャラ翼にとられてるぞ!」


翼、
「ナニソレ?」


シオ、
「翼、カッコええもんなぁ~!そりゃぁ…」


翼、
「え?」


シオ、
「やっ、あっ、なんでもない!!」



アツシ、
「なんじゃそりゃ?」


シオ、
「よし!今日は飲むぞ~!!」



アツシ、
「わけわかんね―!」

シオは笑っていた。


しかし翼には、その笑顔がなんだか寂しげに見えた。


「付き合うよ!」


「さんきゅっ」




そしてシオはビール片手に翼の肩に手をまわして叫んだ。


「翼クンと付き合っちゃうぞ~!!」






みんながゲラゲラ笑った。




(きっとあいつなら、

ケンならこうやってみんなを笑わかすんやろ―な…。




今が続けばいいと願っていたケンは、きっと自分がいなくなった今もそのまま、続けばいいと思ってるはずや。


天国とか…あるのかないのか知らへんけど、

きっとどっかから見てるんやろ?



そんなら見とけや!

お前がうらやましすぎて化けてでてくるくらい、みんなで楽しくやってくからな!!)



生ぬるくなったビールを一気に飲み干した。


ひときわ苦いビールだった。




苦さが目にしみた気がして、シオは慌てて目をこすった。



波の音が聞こえないくらい、みんなの笑い声が響いていた。








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