君への距離
「杏ちゃん…」


いつの間にかいなくなったリョースケのおかげで浜辺には杏と翼の二人きりだ。




「絶対、全国いくから!」



「うん!」
杏は微笑んで翼を見つめる。



「東京ドーム連れてくから!」



「うん!!」



「あのさ…」



「ん?」



「だから…その、」



(好きです。)



ただ一言が言えなかった。


声がでない。


告白なんてしたことのない翼は何を言ったらいいのか分からなかった。






「まずはあさって、がんばるよ!」

裏腹なセリフしか声にならなかった。



杏はにっこり笑う。

「無理しないで、頑張ってね!」




翼は照れながらうつむいた。





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