君への距離
「水本~!!」


心理学の中原が、こっそり忍びこんできた杏を見つけて大声を出した。


「ぉ、おはようございます…」
杏はひきつった愛想笑いを浮かべる。



「杏~、こっちこっち!」
小声でナナミとミカが杏に手招きした。




「さんきゅっ」
ナナミたちの隣に座りながら、杏は小声でお礼を言った。



ナナミは明るいブラウンのふわふわロングヘア。いつもかわいい服装やヘアアレンジをしているほとんどジャージの杏とは真逆の女の子らしい女の子だ。


ミカは、チョコレート色の肩までの髪をキレイに巻いているお姉な女の子。大人っぽくて背も高い。こちらもちびっこで子どもっぽい杏とは真逆のタイプだ。



「杏が遅刻なんて珍しいね!」
ミカがにやりと笑った。


「杏、いつもナナのおばあちゃん並に早起きだも~ん。」
ナナミも笑う。


「昨日寝るの遅かったからね…」
杏が眠そうに言った。

「まさか大人になっちゃったの?杏チャンっ♪」
ミカがニヤニヤしている。



「翼クンが寝かしてくれなかったぁ?」
ナナミもニヤニヤしている。



「なっ!ちょっと!違うっ!!」
杏は真っ赤になって慌てた。




「水本!!」
中原がキレた。
教室にいたみんながクスクス笑っている。




「う・る・さ・い!」中原はドスのきいた声で杏を叱りつけた。





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