良と遼〜同じ名前の彼氏〜
それはたったの一言だった。


そう言って遼平は、あたしに背を向けた。


そして再びゆっくりと歩き出す。
あたしから少しずつ、遠ざかっていく。


「待って遼平!」


だせる力の全てを振り絞ってあたしは叫んだ。


遼平の肩がピクッと動く。
でも遼平は足を止めなかった。


「好き!」


その言葉は自然に、あたしの口をついてでた。


「遼平が好きだよ!
会いたかったんだよ!」


頬には熱い涙が伝っていた。


凍りついたあたしの頬を溶かすような、固まった心を緩ませてくれるような、確かな熱をあたしは感じていた。
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