良と遼〜同じ名前の彼氏〜
後ろを振り返ると、コンビニのビニール袋を下げた遼平が、歩いてくるのが見えた。


「遼平!ゆっくりしてる場合じゃないってば!あと5分で新幹線でちゃうよ」


駆け寄るあたしに遼平は白い歯を見せて、また笑う。


遼平が浜松へ行くと言ったのは、一週間前のことだった。


「兄貴の携帯によぉ……
蒸発した母ちゃんから連絡があったんだよ」


それは、突然の告白だった。
当然遼平にとっても、突然のことだったみたいだ。


三年前、遼平が中学二年生の時。
遼平の母親は突如としていなくなった。

「男作ってどっか行っちまったんだよ」

上の兄にそう聞かされた時、遼平は別段ショックは受けなかったと言っていた。

父親の愛人だった自分の母親。
三人の息子の母親であることをある日突然放棄した、母親。


電話の内容は、こうだった。
< 72 / 75 >

この作品をシェア

pagetop