記憶のカケラ

『いい?葵。人ってね、ある日突然別れがきたり、出会いがあったりするものなの。だから、今を大切にしなくちゃいけない。……って、まだ小学生のあなたに言ってもわからないかしらね』

そうお母さんは言っていた。
あの時はわからなかった言葉の意味が、今ならわかる気がする。
お母さんは…、突然別れがくる日のために、やり残しのないように生きて…って、意味なんだろうな……。

車に跳ねられ、体が浮いた。私は最後と思う空を、スローモーションで見ながらそんなことを思い出していた。

もう……みんなとお別れ…なのかなぁ?
私、まだ9歳なの…に……。



記憶は、そこで途切れてしまい、覚えているのはそれだけで……。

それからの私は、懐かしい夢を見た―――





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