記憶のカケラ
家庭教師
あぁ…、全っ然わかんない。頭をどう回転させても、この問題だけはわかんない。
早く勉強終わってーーっ!
只今、葵、家庭教師さんと勉強中です。
ずーっと勉強してなかったもんだから、問題が全く解けない状態で、頭がこんがらがってます。
早く終わってよぉぉお……。
「はい、ボーッとしない」
頭を軽く叩かれ、引き戻された私。
「だって……わかんなぃ……」
「えっ、これもわかんないの…?葵ちゃん、さっきから“わかんない”って言い過ぎだよ?」
「だってわかんないんだもーんっ」
もうやだぁっ。
頭が死んじゃう……。
そう思いつつ、時計をちらりと見る。
あと30分……。
「この問題はね………」
と家庭教師は言って、わかりやすく解説をしてくれる。
悔しいけど、わかってしまう……。
「……だから、こうなる」
「成る程…。じゃあ、次の問題もこれと一緒のようにやればいぃの…?」
「そのとーり♪」
笑みを見せる彼は、どこか嬉しそうだった。
その様子をドアの影からこっそり見ていた母は、ふふふと笑って上機嫌。
「やっぱり、功くんに頼んで正解だったわね……♪」
そのとうり。
家庭教師というのは、功のことだった。
葵的には、自分よりずっと年上の人じゃないから、やりやすいとのこと。