記憶のカケラ
すると……、私はすぐ傍にいた人を見て、目を覚まして早々、驚いてしまった。
「ぁ…の……」
小さな声を出してみると、傍にいた男の人がパッと顔を上げて、目の辺りを拭っている。
「葵っ…?目、覚めたのかっ…!?」
見れば、わかるでしょ。と思いつつ、私は彼に問いかける。
「ぁなた……だれ…?」
「ぇ……」
男の人は、見覚えがあるようで覚えていない。
この人…誰だろう。
男の人は、目線をパッと外し、立ち上がったと思ったら、病室を出ようとした。
「どこ行くの…?」
「……先生呼んでくる」
顔も合わせずそう言うと、彼は病室を出て行った。
「……」
私は、眩しい光が差し込んでいる窓を見つめながら「お昼まで寝ちゃったのかな」と呟いてみた。
病室内は、1人だととても静かで、隣の部屋にいる人達の声が聞こえるくらいだった。
季節は夏だから、蝉の声もいっぱい聞こえる。
なんだか、また寝ちゃいそう……。
布団に顔をうずめた時だった。
「…先生、連れてきた」
その声で、目が覚めてしまった。
体を起こすと、男の人の隣にいた、背の高い先生が、私と同じ目線でしゃがんでいた。
「咲月さん、体調は大丈夫ですか…?」
「ぁ……はぃ。大丈夫です」
「そうか」
先生は笑顔を見せると、近くにあった椅子に座り、男の人も椅子に座らせた。