記憶のカケラ
「これから大事な話があるんだ。……と、言っても、すぐ終わるけどね」
先生は、少し困ったような顔をした。
男の人は下を向いて、少し悲しそう。
「……?」
私は、よく理解もせず、先生の話を聞くことにした。
「あのね…、咲月さん。交通事故にあったのは覚えてるかな?」
「はい…?」
そりゃ、昨日のことだから……。はっきりじゃないけど、覚えてる。
「咲月さんは、それが昨日の出来事だと思っていないかな?」
「……はぃ」
なんでだろう。この後の言葉が怖い……。
「…それはね、大きな勘違いなんだよ。咲月さんは、4年間眠っていたんだ」
「……ぇ?」
「ずっと眠っていた本人には、つい昨日のことに思えるだろうけど……」
うん。そのとおりだよ。
私、昨日のことのように覚えてるもん。4年間も眠ってたなんて、そんなの……。
「……本当に、4年間眠ってたんですか…?」
「…意識が曖昧だったが、咲月さんはちゃんと生きていた。彼や、彼の友達だって、毎日交代でお見舞いに来てくれていたんだよ……」
そんな……。
じゃぁ、あれは4年前の出来事?私は、本当に今まで眠っていたの…?
急に頭に今の話が飛び交って、必死で理解しようとするけれど……。なんか、また気が遠くなりそう……。