記憶のカケラ
「先生、こいつ、見た目はあれだけど、中は多分元気だからさ。今、退院させてもらっちゃダメですかね?」
「え…。まぁ…、それで異常がないなら構わないけど……」
えっ、先生優しすぎませんか?
普通なら「まだ早い」とか言うのに……。
「ありがとうございます。じゃあ、荷物まとめちゃいますね」
そう言うと、彼はせっせと荷物を片付け始めた。
「咲月さん」
急に名前を呼ばれたので、私は少しびっくりしてしまった。
「さっきの話、理解するしないは、あなたの勝手です。これからの生活で、またいつもの咲月さんに戻ればいい。…すくなくとも、私はそう思っているよ」
先生は話しを終えると、またにっこりと笑顔を見せて、病室を出て行った。
優しい先生…だったな。
……うん。そうだよね。これからまた、いつもの私に戻れば、それでいい、よね。