私心*君心*恋心*愛心
「あぁ、女欲し~!」


「ケンゾー…お前、さっきからそればっかしか言ってねーぞ?」


「だって、女に飢えてんだもん俺…」


机の上に突っ伏して溜め息を漏らす。


彼女イナイ歴1年半。


丸坊主で一重瞼のせいで目付きが悪いと怖がられ、寄って来る女なんているわけねぇ…


はぁ…悲しい。


「ケンゾー、まだ帰んねーの?俺は帰るからな!」


「あっ、俺も帰る!」


ダチのカイジはイケメンで最近、気になっていた女と付き合い始めたらしい。


く~っ!


俺もカイジくらい、かっこ良かったらウハウハなのに!


はぁ…カイジはデートだって言うし、俺は本屋に寄ってから帰ろっかな。


本屋の入口に足を運ぼうとした時…


―ドン


「うわっ!」


「キャッ!」


本屋から出てきた地味な0L風のメガネ女とぶつかってしまった。


「ごめんなさい!」


女は慌てながら、地面に散らばった本を拾い集めている。


「こっちこそ、すいません。」


俺も一緒に本を拾い、女に渡すと恥ずかしそうに「ありがとう」と言うと本を抱き締めて俯いてしまった。

女の腕の中にある本に視線を移すとOLが愛読するファッション雑誌だった。


へぇ~、こんな女でもこういうの読んだりするんだ?

なんか、似つかわしい感じがするけど…


「あ、あの…」


俯いていた女が突然、喋りだしドキッとしてしまった。


「なんすか?」


「私みたいなのが、この本を読んだら…変われますか?」


「はっ?」


突然、何を言い出すのかと思えばイメチェンしたいって事かよ?


「無理じゃね?」


「えっ!?」


俺の言葉に顔を上げると驚きと悲しみの色を交えた表情をしていた。


そして、肩を落とし瞳を潤ませ、また俯いてしまった。


「そ、そうですよね…。変われる訳ないですよね。」

なんか、わりぃ事言っちまったな…


「ありがとうございました!でも、一度頑張ってみます!」


頭を深々と下げ、顔を上げるとメガネを外し目元に滲んだ涙を拭いながら、俺に笑顔を見せた。


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