月に問う
美月チャンを腕の中に包み込んだまま、自分の気持ちを話し始めた。




『俺…、櫂斗サンから美月チャンと付き合ってるって聞かされて、すげぇショックだった。』


「うん…」


『美月チャンに真実も聞かずに櫂斗サンの言葉だけを信じてた。でも、会って真実を聞こうと思ってた…。そして、自分の気持ちも伝えようと思ってた。』


「うん…。」




美月チャンは何も言わず、ただ「うん」とだけ頷いていた。




ゆっくりと美月チャンを腕の中から引き離し、目を逸らさずまっすぐ見つめた。




『俺…、今までいろんな女達と遊んで、適当な事ばかりやって来た。だから、本気で誰かを好きになった事なんてないんだ。』


「うん。」


『でも、こんな汚れた俺でも初めて人を好きになったんだ。男がいるかもしれないって聞いて、何度も諦めようとしたけど、諦められなかった。』


「うん。」




涙を流しながら美月チャンも目を逸らさず、俺をまっすぐ見つめている。




その表情がすげぇ愛おしくてたまらなかった。




そして、無意識に美月チャンの眼鏡を外し、頬に伝う涙をゆっくり拭いながら…




『俺…、美月チャンの事が好きだ。たぶん、あの雨の日から好きになってた。だから、櫂斗サンにも誰にも渡したくない。』




美月チャンへの想いを素直に伝えたんだ。


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