月に問う
―放課後




『はぁ…マジ最悪。疲れた…。』




授業中、ぼんやり過ごしていたせいで先生に呼び出しを食らい、説教された挙げ句、準備室の片付けの手伝いをさせられた。




カバンを取りに教室に向かうと、さすがにみんな帰ってしまい、シーンと静まり返っていた。




そして、オレンジ色の陽が射し込んでいる教室は切なくて胸をギュッと締め付けられる。




自分の席に着き、カバンを枕代わりに机に突っ伏した。




目を閉じて半分夢心地でいると現実なのか夢なのか誰かの声が聞こえてきた。




《ねぇ、帰らなくていいの?》




うん、帰るけど…




《いつも、前髪結んでるよね?》




うん、前髪が長くてうっとうしいから…




《じゃあ、切ったらいいじゃない?》




うん、でもかわいいでしょ?




《うん、似合ってる》




その声はとても優しくて、心地よかった。




そして、俺の結んでる前髪に優しくそっと触れた。


< 66 / 67 >

この作品をシェア

pagetop