‥伝えたいコトバ‥
私に料理を教えてくれたのも津田じいだった。
それは決まってコロッケで、というかそれしか作れなかったんだろうな。
味付けから揚げ加減までとにかくこだわっていて、それがあまりに美味しいから
『お店で出したら売れるかなあ?』
と聞いたら
『なあの家は中華料理屋だっけ無理らろな〜』
と言われた。
そうそう、私は津田じいに
『なあ』
と呼ばれていた。
「おい」とか「ねえ」とか呼びかけの種類みたいなあだ名だったけど私自身自分のことを『なあ』と呼んでいた。
友達も家族も私を『なあ』と呼んだけど、そのあだ名も歳を追うごとに使われなくなって最期まで私を『なあ』と呼んでくれたのは、津田じいだけだった。