王子様を見つけて?
*第1章*
王子様
桜が舞い散る。
春
4月……━
「お母さん!あたし行くよー?」
久しぶりに出したような元気な声で、キッチンにいるお母さんに告げた。
「心結(みゆう)!あんた本当に大丈夫なの?忘れ物ない?」
バタバタと足音をたて、玄関までわざわざ駆け付けたお母さん。
やけに心配そうな表情をするお母さんに、にこーっと余裕の笑みを見せた。
「大丈夫だって!1人でもやってける自信あるもん。お母さんが思ってるよりしっかりしてるんだから」
「…………あんたのその自信はどこら来るのかしら」
頭をかかえる姿を背に、新品のローファーに足を通した。
靴棚にある全身が映る鏡に自分を映し、最終確認。
「………よし。完璧」
そして、ようやくカバンを手にガチャと玄関の扉を開ける。
「じゃね、お母さん。自立してくるねー」
「もう、何言ってんのよ、全く………。忘れ物があったらメールしなさいよ!すぐに送るからー!」
お母さんは、連絡も月に1回はしなさいよー!と叫びながら、あたしの背中を見送ってくれた。
ピッカピカの制服。
染めて茶色になった髪。
上達してきたメイク。
頑張ってダイエットした体。
世に言う『高校デビュー』した姿で、あたしはこれから新しい学校へ向かう。
あたしはこれから、青春を味わいに行くんだ。
そんな
最高の高校生活を夢見るあたしは
まだ高望みしすぎていたのかな?
おとぎの国のお話で
終わっとかないといけなかったのかな?
ねぇ
王子様………。