王子様を見つけて?



あっさりとした堕ち方だ。


「ツンデレ…」

「………は?」



眉に皴をよせて、怪訝な顔をする彼。

思わずたじろいだ。



「ツンデレって…」

「え、あっあたし…」

「俺のこと言ってんの?」

「いやっ、…その、あの………。す、すいませんでしたあああああ」



バタバタと廊下を、これでもかってくらいの速さで走った。


A組の教室まで、彼を振り替えることなく走った。


ていうか、彼があたしを見れないくらい速く走った。







A組の教室の前で立ち止まり、壁に背を預ける。


あ、あたし…………

なんてこと言っちゃったんだろう。



つ、ツンデレだなんて……。

不覚にも程がある。

自分で自分に驚いた。


彼のほうがもっと驚いたに違いない。

さっきの顔、本当にびっくりした顔だったし。




だけど


「……あの人、なんか、好き」


一目惚れってやつなんでしょうか?

人生初の一目惚れ。




「うわあぁー……」

あのギャップは堪らなかった。

まさにツンデレ。


思い出すだけで、顔に熱が帯びるのを感じる。


可愛い顔して、中身はサバサバしてて

そうと思えば、中身に似合わず優しいことをやっちゃってくれた。

素の性格でツンデレだなんて、そんな人初めて会った。





また会えるかな…?

単純にそう思える。



だけどこんな多人数の中の1人だなんて、探すのも大変だし。

まず、3年間もうちにまた会えるかも分からない。



けど、あの人となら、なぜか会える気がする。

またどこかで、話ができる気がする。

それは確信にも、現実にもなってはいないけど。




あたしはこの日、運命の出会いを覚えてしまった。

これが運命の出会いなのだろう。

今のあたしには、信じて疑えないや。



そして

あたしは今まで


一目惚れで、好きだと自覚する時間がこんなに短いなんて知らなかった。



< 11 / 72 >

この作品をシェア

pagetop