王子様を見つけて?
あっさりとした堕ち方だ。
「ツンデレ…」
「………は?」
眉に皴をよせて、怪訝な顔をする彼。
思わずたじろいだ。
「ツンデレって…」
「え、あっあたし…」
「俺のこと言ってんの?」
「いやっ、…その、あの………。す、すいませんでしたあああああ」
バタバタと廊下を、これでもかってくらいの速さで走った。
A組の教室まで、彼を振り替えることなく走った。
ていうか、彼があたしを見れないくらい速く走った。
A組の教室の前で立ち止まり、壁に背を預ける。
あ、あたし…………
なんてこと言っちゃったんだろう。
つ、ツンデレだなんて……。
不覚にも程がある。
自分で自分に驚いた。
彼のほうがもっと驚いたに違いない。
さっきの顔、本当にびっくりした顔だったし。
だけど
「……あの人、なんか、好き」
一目惚れってやつなんでしょうか?
人生初の一目惚れ。
「うわあぁー……」
あのギャップは堪らなかった。
まさにツンデレ。
思い出すだけで、顔に熱が帯びるのを感じる。
可愛い顔して、中身はサバサバしてて
そうと思えば、中身に似合わず優しいことをやっちゃってくれた。
素の性格でツンデレだなんて、そんな人初めて会った。
また会えるかな…?
単純にそう思える。
だけどこんな多人数の中の1人だなんて、探すのも大変だし。
まず、3年間もうちにまた会えるかも分からない。
けど、あの人となら、なぜか会える気がする。
またどこかで、話ができる気がする。
それは確信にも、現実にもなってはいないけど。
あたしはこの日、運命の出会いを覚えてしまった。
これが運命の出会いなのだろう。
今のあたしには、信じて疑えないや。
そして
あたしは今まで
一目惚れで、好きだと自覚する時間がこんなに短いなんて知らなかった。