王子様を見つけて?




見上げる彼の顔には、驚きの色がありありと表れていた。


けど、先程の冷たい視線は一切残ってはいない。



それだけでも、今のあたしは安心できた。



ここまで言った上で、さらに拒絶されたら、立ち直れたもんじゃないから。




「………お願い」






一目惚れ。


単なる小さな一目惚れに賭けているあたしは、何を感じていたのだろう。






この先の運命が見えていたのかな?



なぜかあたしは、この人に執着していた。








「…………………分かったよ」



「…………え?」


「分かったっつったの」


「え」


「分かったから……腕、離してくんね?」




きつく握り締めたあたしの腕を指差して、彼はまわりを見渡した。


あたしも同じようにまわりを見渡すと、廊下を通るあらゆる人がじろじろこちらを見ている。


絡まった腕を意味深に見つめ、ニヤニヤしながら通りすぎている。



「すっっっすいませぇんっ!!」



状況を把握して、素早く両腕を身元に引いた。


自分のしていた、大胆な行動に今更ながら羞恥が沸き上がる。




あわわっと頬に手をあて、体温を下げる努力をしていると


「シカトはしねぇよ」


ぼそっと斜め上から小さな声が聞こえた。



「………え」


「お前、可哀想だからシカトは避けてやるよ」




彼は顎をあげてあたしにとって有り難い言葉を、なんなく発した。





< 23 / 72 >

この作品をシェア

pagetop