王子様を見つけて?
見上げる彼の顔には、驚きの色がありありと表れていた。
けど、先程の冷たい視線は一切残ってはいない。
それだけでも、今のあたしは安心できた。
ここまで言った上で、さらに拒絶されたら、立ち直れたもんじゃないから。
「………お願い」
一目惚れ。
単なる小さな一目惚れに賭けているあたしは、何を感じていたのだろう。
この先の運命が見えていたのかな?
なぜかあたしは、この人に執着していた。
「…………………分かったよ」
「…………え?」
「分かったっつったの」
「え」
「分かったから……腕、離してくんね?」
きつく握り締めたあたしの腕を指差して、彼はまわりを見渡した。
あたしも同じようにまわりを見渡すと、廊下を通るあらゆる人がじろじろこちらを見ている。
絡まった腕を意味深に見つめ、ニヤニヤしながら通りすぎている。
「すっっっすいませぇんっ!!」
状況を把握して、素早く両腕を身元に引いた。
自分のしていた、大胆な行動に今更ながら羞恥が沸き上がる。
あわわっと頬に手をあて、体温を下げる努力をしていると
「シカトはしねぇよ」
ぼそっと斜め上から小さな声が聞こえた。
「………え」
「お前、可哀想だからシカトは避けてやるよ」
彼は顎をあげてあたしにとって有り難い言葉を、なんなく発した。