王子様を見つけて?
一礼しておく。
てか、何で今怒った感じになったの?
あたし握手以外に何かしたっけ?
心当たりがなくて、……でも本人に聞くことはできない。
今の顔でさっきみたいな暴言吐かれたら、本気で傷ついてしまいそう。
挨拶だけすまして、怒った輝くんを刺激する前に立ち去ろうと、クルッと回れ右。
そそくさと、部屋の扉を開けようとしたら
「當間」
不意に名前を呼ばれ、思わず振り返る。
その声は、怒っているという表現とは不釣り合に、案外しんみりとしたものだった。
しかも、しかも…………初めて名前、言ったよね?
「な、何…?」
「……」
「輝くん……?」
「……ううん。やっぱ何でもない」
視線を落として口を結んだ輝くん。
すこし気になったけど………
「ねえ、輝くん」
「あ?」
「あたしの名前、覚えててくれたの!?」
そっちのほうが気になって、気になって。
思わずニヤけながら、そう尋ねた。
「自分で自己紹介したじゃねえか!」
「でもまさか、覚えててくれるなんて思わなかったから」
「…き、記憶力だけいいんだよっ!」
「なんなら名字じゃなくて、下の名前で呼んでほしいなー」
「……お前、ほんっとバカじゃねえの?」
「なんでよー!?」
「てめぇは何があっても“當間”なのぉ」
「違う、違うっ!みーゆうー!呼んでみてよ」
「當間」