王子様を見つけて?
「違うってば!」
なんて口では言っているけど、本当は名字でさえドキッとしてしまう自分がいた。
こんなんじゃ、冗談で名前が呼ばれたとしても半端じゃないくらい心臓がやばくなっちゃうと思う。
「もういいよ。あたし部屋戻る!」
ドキドキに負けて、いてもたってもいられなくなり部屋に逃げ込む。
なんて弱いの、あたし。
単に名字呼ばれただけなのに……。
輝くんにはめっぽう弱いのかもしれない、と自覚しながら部屋のドアに手を掛けた。
ガチャ
「おい、當間」
再びあたしを呼ぶ声がして手を止める。
輝くんは両手をポケットに入れたまんま、口角を上げて言ったんだ。
「彼女になったら呼んでやるよ。“心結”って」