王子様を見つけて?




昼休みに入って約8分───…




がちゃ、という屋上の鉄の扉が開かれた音がして、耳を傾ける。


口に運ぼうとしていた三角おにぎりを持つ手を止めた。





昼休みに入ってあんまり時間も経っていないし、まさかのまさか輝くんじゃないのかな?



と期待を膨らませながら、その開かれた扉に目を向ける。


ちょっとドキドキしているあたしの目に映ったもの。それは






「………え」


「あーー!輝くんだっ!」






正真正銘、藤下輝くんでした。


茶色い髪の毛が、春風になびく姿にあたしは思わず瞳をハートにさせてしまっている。




着くずした制服。


まだ入学してから日にちは全く経っていないというのに
この制服の隅々まで知っているかのように程よく着くずしている輝くん。


同じクラスの男の子の制服とは、一変、違う学校のすごくお洒落な制服を来ているかのような錯覚さえ生じてしまっていた。



ネクタイとブレザーがこんなにも似合う男の子は、輝くん以外にいらっしゃるのか、
といっても過言じゃないよ。




「お前、なんでここにいんだよ」




ぶっきらぼうな言い方。

けど、本当に顔は可愛くって…。




「輝くんがここにいるって教えてくれたから!」


「それ…比呂だろ?」


「うん!」






悪怯れもなくそんなことが口にできるんだ。


冷静に考えたらストーカーみたいなこと、あたしやっちゃってるよね?







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