王子様を見つけて?
また、どす低い声が少し上の方からする。
「……え、可愛いって………えっえ、えええー!!??」
すごく可愛い顔をしたその人。
輪郭もすっきりしていて、目ぢからが強いその人。
なのに………
「せ…………背ぇ高ぁー!?」
あたしの頭1分はあるだろう、その身長。
目の前の長身の人は、あたしを悠々と見おろしていた。
しかもしかも、よく見ると…
「え……ず、ズボン!?」
を履いていた。
顔だけしか見ていなかったから、分からなかったけど。
ズボン、履いていた。
「え?男の子、ですか?」
「ったりめぇだろ!した見ろ、下を!」
「は、はいいぃ!すいませんっ!」
女の子みたいな顔をしていたから、全く気付かなかった。
髪型だって、ショートにしている女の子にいそうな長さ。
ワックスとかも使ってないし、ふわふわしてるし男の子だとは思えない。
でもこれを本人に言ったら、キレられそうなので口を閉じる。
そんな風に思わせる、そんな殺気は、彼女…じゃなくて彼のものだろう。
たぶん、それは気のせいじゃない。
「あ………これ、お前の?」
彼は腰を曲げて、何かを手に取りあたしに見せる。
「………あ」
手の中には、あたしがいつも身につけている、うさぎのストラップ。
変な色のストラップ。
茶色のストラップ。
「すいません。ありがとうございます」
それを受け取り、相手の機嫌を害なわないように丁寧にお礼を言った。
そして、その場を後にする。
あの人、顔は可愛いかったけど中身が鬼のように怖い。
これ以上関わらないように素早くその人に背を向けた。