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「は? なんで?」



終始、迷惑そうに見えた運転手を突然に“いい人”だったと云われ、私には疑問符しか出なかった。



「え? だって待たせてる間の金取んなかったでしょ?」


「ああ。でも、あらかじめ云っておいたし」


「じゃあ、尚更。実際、どれくらい待たされるかも分かんないのにいい人じゃん」


「そういうもんなの?」


「まあ、確かに人によるんだろうけどさ。時間的には、早く繁華街戻って流したいと思うよ。割増の時間帯でもあるし、稼ぎ時に拘束されるんだから余計にね」


「そうなんだ」


「コーヒー1本で笑ってくれりゃ安いもんだよ」



“ふーん”と頷きながら、よく笑うヤツだなぁと思った。
豪快に笑うかと思えば、今みたいに優しい目で微笑む。
切長の目が細くなって、なくなるみたいに。


ナオヤもよく笑うが、こんなんじゃない。アイツはもっと馬鹿っぽい笑い方だから。





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