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ボタンを押しただけで聞こえてくる悲鳴のような声に、もはや耳にあてることはせず送話口にだけ向けて放たれるアキトの言葉。


「い〜ま、向かってるってばっ!」


そう云いながら、こちらを向いて後退るアキトは話す言葉とは裏腹に満面の笑顔で大きく手を振る。


それに応えて、手を振るのがやっとの私。


ナオヤをなだめながら話すアキトの声が少しずつ遠くなる。


それと一緒に少しだけ、寂しくなるような気分だったけど、私の胸のドキドキはまだ消えてはいなかったから、アキトが角を曲がって見えなくなるまで手を振っていたような気がする。





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