last Wish〜最期の願い〜
途端に、拓が、私から離れた。


「やらし〜声!」


拓が笑ってる。


「やらしくないもん」


私は、むすくれたみたいに答えた。


「あれぇ、もしかして、キス止めたの、嫌だった?」


意地悪そうに、拓がニヤけた。


嫌だったなんて思わない。


だってあのままじゃ、


私…どうにかなっちゃいそうで、


少し、少しだけ、怖かった。




そのまま無言で、何も答えない私の手を


拓は優しく握った。


「俺、あのままじゃ歯止め効かなかったから…」


まるで、キスを止めた事を


謝罪するみたいに、拓が言った。


「拓………」


私が言いかけた瞬間、


拓は、私の手を引き、走り出した。




「ちょ、拓、どこ行くの?」


私は、拓の足の速さに驚きながら、


少し息の切れた声で


拓に問いかける。


「記念日だから、おそろいのモノ買おッ」


拓が握ってない方の手で


ピースした。


…子供みたい。




でも…そっか。


そういえば私達、おそろいのモノは


持ってなかったよね。
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