空色パステル
駅に着くと、千夏が来ていた。
『塚田駅』と書かれた入り口をくぐる。
「美緩ちゃ~ん!」
「ち-ちゃん☆
今日はどこ行くの?」
「ん、秘密♪」
ち-ちゃんはいつもそう言う。
大好きなち-ちゃんの声が聞けなくなるのかぁ…
と思うと、しっかり記憶に焼き付けておかないと消えてしまいそう…。
ねぇ、ち-ちゃん?
美緩ね…引っ越すんだ。
だから今日で遊べなくなっちゃうの。
こんなことになるなら、もっと遊んでおけばよかったね。
今更になって後悔してるあたしはだめだね。
こんなんじゃ、新しい所に行ってもうまくやっていけないね?
今、決心してち-ちゃんに話すね。
この地で、一番に大切な人だから…。
そして大好きな親友だから。
「ち-ちゃん…
あたしね、引っ越すんだあ…。」
涙をこらえて言う。
ち-ちゃんの顔が見れない…
「…なんで??
今すぐじゃないよね?
千夏はまだ一緒にいたいな…」
ち-ちゃんが珍しく震える声で話す。
「今日が最後の思い出…
ってこと?」
頷くあたし。
そんなあたしを見て、寂しそうな顔をするち-ちゃん。
ごめんね…
あたしもまだここにいたいよ…。
だけど…
だけどね?
だめなんだって…。
離ればなれになるけど…ち-ちゃんのこと、忘れないよ。
「…今日は楽しもうねっ」
声の限りに言う。
電車の隣から鼻をすする音が聞こえた。
ち-ちゃんが泣いてる…?!
別れはとても辛いもの。
あたしはもう何回も同じ経験をしてきた。
親の仕事で引っ越したりたくさんした。
ここなら、あたしがずっと暮らしていけると思ってた。
だけど…
サヨナラだね。
みんなが悲しまないように笑顔で『サヨナラ』できるように…。
あたしがいなくなっても笑って過ごしてくれるように…。