空色パステル

携帯を静かに机に置く。
するとまた鳴り出す携帯。


♪~♪

携帯はあたしの大好きな曲を奏でる。

サブディスプレイには
『新着メール受信 拓弥』の表示。


さっきまでのドキドキが嘘のように止まる。

心の中に黒い闇が広がる。



メールを開く…。
『美緩、今幸せか?』

たったこれだけの文章。



だけど、拓弥のことだから何回も何回も消して考えたんだろうな。


「幸せ………かぁ」


あたしは…今幸せだよ。
今のあたしには遼がついてるから。


嘘偽りなく楽しく過ごせてるから。





拓弥に返信。


『あたしは今、幸せだよ(^^)★
拓弥は幸せ??』




幸せ…だよ。
とても…とても。




拓弥は、あたしが他の人を好きになったと知って黙って身を引いた。

たまにくれるメールは拓弥の優しさがたくさんこもっている。



『泣いてないか?』とか

『寂しがるなよ★』とか

たくさんの愛と優しさがつまったメール。




あたしの元気がないときは笑顔にしてくれるし、
あたしが泣いているときはそっと涙を拭ってくれる。


あたしはそんな拓弥に恋をしたんだ。
さんざん傷つけられたけど、恋をしていたのは事実。


あの頃は拓弥が好きだった。



だけど……
季節は変わったんだよ。

あたしの心は拓弥の季節から変わったんだよ。




あたしの今の元気の源は、遼。

ただ一人。



拓弥、ごめん…。

拓弥があたしのためにたくさんのものを犠牲にしてきたんだって知ってる。




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