空色パステル
「君ってもしかして…
美緩ちゃん?」
頷くあたし。
「…そっか
幸せになってね…」
拓弥のお兄さんは
寂しそうな表情で言った。
後ろから誰かが走ってくる音がした。
「…兄ちゃん!」
その声に胸がはねた。
それは、何度も聞いてきた
大好きだったあの声。
拓弥の声…。
「あ…美緩」
あたしに気付いた拓弥。
そして、あたしと拓弥のお兄さんに近づいてくる。
あたしの立つ場所の
一歩手前に拓弥が立った。
ギュ……――
…………え?!
頭の中が真っ白になる。
やめて……
お願いだからやめて……
離そうともがくけど拓弥の
力が強すぎて離れてくれない。
目を開けると拓弥の顔が
目の前にあった。
「や……めて…!!
やめてよ!!」
拓弥を突き飛ばす。
「バカ……バカバカバカ!!
意味わかんないよ……!
あたし達もう終わったはずだよね…?
なんで……
なんでこんなことするの?!
バカ拓弥!!!
拓弥も尚と一緒だよ!!!
もう…もう振り回さないで…
あたしは…いつまでも
拓弥のものじゃないんだよ!!」
勢い余ってひどいことを
言ってしまった。
拓弥は驚いた顔であたしを見つめる。
「美緩……ごめん」
何も言えなかった。
返す言葉が見つからなかった…
サヨナラ……
大好きだった人…
「バイバイ…拓弥」
そう言い残して走り出す。