空色パステル



あたしは…
どっちが大切なんだろう?



遼―……?

拓弥―……?




それすらもわからない。

どちらかを選べば、
どちらかが傷つく。




でも……
あたしにはそんなこと選ぶ権利ないから…




どちらかを傷つけるくらいなら
あたしが傷ついた方がずっとずっと
良いに決まってる。



『美緩、俺を見てくれねぇか…?』




拓弥の言葉があたしの心に響き渡った。





でもね……


「…ごめん……。

あたしには選ぶ権利なんか…ないから」




一言一言、心を込めて言う。

そして最後に、

「あたし……
拓弥が好きだったよ」



と言った。




そう。大好きだった…

ずっとずっと。






『美緩……ありがとな

俺…待ってるから。
美緩のこと、待ってるから』





…気付けば、拓弥にキスされてた。






拓弥に抱き締められると
とても小さく見えるあたし。


そんなあたしを、優しく温かく
抱き締めてくれる拓弥。



あたしは…
そういう拓弥も好きだった。



でも今は…違うよ。




あたしは…遼が好き。







心に言い聞かせる。

“あたしの好きな人は遼だよ”


って。


けれど、拓弥の体温があたしの心から
消えてはくれない…。



お願いだから…
言うこと聞いてよ…



あたしの心は、今にも崩れそうで脆かった。

自分の心が揺れ動くのがわかる。


あたしにとって、幸せなのは誰だろう…?


わからないや…


あたしにはもうどうしていいか
わからなかった。










ちゅっ…



唇に温かいものが触れた。






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