♥兄恋♥



『乃愛』ってよんだ事があるのか微妙だった。


あたしのためにいつも働いてくれた。



10歳の誕生日の日。初めて会社を休んであたしと遊園地へ行ってくれた。




観覧車に乗ったとき、初めてお父さんの笑った顔をみた。


夕焼けで縁取られたお父さんはあたしに

「なるに似てきたな。」

と一言言って帰ったことを覚えている。






「お父さん…」


「智也さんね、乃愛ちゃんのお母さんのお墓参りの帰りに車に引かれたらしいの」


お母さん

あたしはお母さんを写真でしか見たことがない。

声も聞いた事がない。

あたしはお母さんが居なくて寂しかった。

お父さん…

あたし…お父さんのこと恨んだりしてないよ。


だから…
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