♥兄恋♥


「あたし・・・知ってるんだから・・・遼が本気で笑ってないの。」


遼はうつむいたまま何も話さなかった。

何秒・・・何分経ったのか分からない。

すごく長く感じた。






「乃愛だけだよ・・・そんなこと言ったの。」

うつむいたままの遼は小さい声で話し始めた。


「俺んちな・・・母子家庭なの。それにな、まだ俺の弟も小学校に入ったばっかで、よく泣くし、まだまだ母さんに甘えたいんだろうけど、母さん忙しいし。家のこと手伝おうって思うけど、家事全然できないし。弟の面倒見ようと思っても、逆に泣かせちゃうし。父さんと母さんが離婚したのも俺が原因かもしれないし。だから早く、恩返しみたいなことがしたくて、高校卒業したら、仕事して、結婚して・・・。」

「・・・。」



何も言えなかった。

あたしの家も父子家庭だから分かる。

でも、ここまで考えたことはなかった。



「だから・・・本気で笑わなかった・・・笑えなかったんだ・・・。」





「ごめん・・・遼。」



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