ピアノ
かちり

時計の針が、5時を指した。
学校中にチャイムが響く。

「あー、もう5時か?」
先生が時計を見ながら言った。

私たちはいきなり夢から醒めた。
「……うん。帰らなきゃ」


『5時になったら帰ること』


それは、私が音楽室に来始めて2週間後に、先生が決めたルールだった。

学生の仕事は勉強です。

が、先生の言い分らしいが、それを告げられたとき、何か悲しかったのを覚えてる。

「そうだな。美音、上手くなってたがリズムが違うところがある。明日教えてやるから」

『明日も来ていいから』

私にはそう聞こえた。明日も来ていいから!

「うんっ!じゃぁ今日は家では弾かないでおくよ。間違いが癖になっちゃいそう。」

私の言葉に、先生は軽く頷いた。
嬉しい、嬉しい。

明日も先生に会える。

「じゃあな、気を付けろよ」

「うん、ばいばい先生。」

私は笑顔で音楽室を後にした。

夕焼けの差し込む廊下は甘い色でとても綺麗。

明日はきっと快晴だ。

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