ピアノ
「美音、どした?昨日も行ったんじゃないの?」
次の日の朝、佳奈に頭を叩かれ言われた。
「………うん。行った。でもね」
嬉しい未来は不安に変わる。
「大野先生がね、私が帰った後、音楽室に行ったっぽかったの。分かんないけど…」
「マジ?!え、それって凄く怪しいじゃん!!ちゃんと見たの?」
佳奈の言葉に私は首を横に振る。
「階段の下で会っただけだもん。でも、気になって。」
なぁんだ、と佳奈は息を吐いた。
「多分、大丈夫だよ。先生どおしで何か用事があったのかもよ。」
だといいんだけど。
何しろ、噂がある2人だ。放課後の密会、なんて、怪しい。
「………だよね。ありがと佳奈。」
佳奈は私を励ましてくれてる。それに卑屈になってどうする、私。
佳奈はにや、と笑って私から視線を外した。
そうだ。一人でうじうじしててもしょうがない。
今日こそ、真木先生に聞いてみよう。
“先生って、大野先生のこと好きなの?”
それが、今の私の精一杯だ。