アトミックステーション
始まり
二十歳の青春を考えてみた。それなりに毎日平和に過ごしているし、彼氏もいる。ちゃんと自炊もしているし、友達との付き合いも順調だ。
青春?
この間バイトに行く途中で駅前をステージにしているストリートミュージシャンを見た!ひどかった。
顔も歌詞も曲も。哀れなまでに。それでも私がバイトを遅刻してまで彼を見ていたのは、青春が伝わってきたからだ。あんなにひどくても前向きに歩んでいるんだと思うと、ゴミを投げられている姿さえ神々しく見えた。私は「青春」に憧れ、そして飢えていた。
「ねぇヒマ」
「眠い」
成績優秀な爽やかな彼氏は土曜日も学校で、私は漫画喫茶で同じ学部の坂城という男子と時間を持て余していた。溜まっているレポート課題に手をつけるでもなく、メイド雑誌をぼんやりと眺めては坂城に「ヒマ」だと連発していた。
「坂城今日バイトは?」
「さぼった」
「わぁ」
「姫は?」
「今日は休み。塾だもん」
雨の降る窓と雑誌とやけにストレートな坂城の髪の毛を意味もなく見て、「カケルくんに会いたいな」と彼氏の名前を呟いた。
「俺がカケルくんになってあげようか」
くらい付いて来た坂城を蹴飛ばして、またメイド雑誌を読んだ。萌え萌えじゃんけん…。
「姫って変わってるよね」
「よく言われる」
「ガード固いくせに誘うと付いて来るし。かと言って、浮気とか有り得ないもんね」
「当たり前じゃん。坂城みたいにバイトも行かずに遊んでたら青春がもったいない」
「じゃあもう誘わないよ」
「それはやだ!」
私が突然大きな声を出したので坂城は肩をすくめた。
「素直になればいいじゃん」
「坂城が誘ってくれなかったら交通手段がないでしょ」
青春?
この間バイトに行く途中で駅前をステージにしているストリートミュージシャンを見た!ひどかった。
顔も歌詞も曲も。哀れなまでに。それでも私がバイトを遅刻してまで彼を見ていたのは、青春が伝わってきたからだ。あんなにひどくても前向きに歩んでいるんだと思うと、ゴミを投げられている姿さえ神々しく見えた。私は「青春」に憧れ、そして飢えていた。
「ねぇヒマ」
「眠い」
成績優秀な爽やかな彼氏は土曜日も学校で、私は漫画喫茶で同じ学部の坂城という男子と時間を持て余していた。溜まっているレポート課題に手をつけるでもなく、メイド雑誌をぼんやりと眺めては坂城に「ヒマ」だと連発していた。
「坂城今日バイトは?」
「さぼった」
「わぁ」
「姫は?」
「今日は休み。塾だもん」
雨の降る窓と雑誌とやけにストレートな坂城の髪の毛を意味もなく見て、「カケルくんに会いたいな」と彼氏の名前を呟いた。
「俺がカケルくんになってあげようか」
くらい付いて来た坂城を蹴飛ばして、またメイド雑誌を読んだ。萌え萌えじゃんけん…。
「姫って変わってるよね」
「よく言われる」
「ガード固いくせに誘うと付いて来るし。かと言って、浮気とか有り得ないもんね」
「当たり前じゃん。坂城みたいにバイトも行かずに遊んでたら青春がもったいない」
「じゃあもう誘わないよ」
「それはやだ!」
私が突然大きな声を出したので坂城は肩をすくめた。
「素直になればいいじゃん」
「坂城が誘ってくれなかったら交通手段がないでしょ」