あたしの初彼☆王子様はお姫様??
その日の夜、あたしの携帯が鳴る。



「もしもし…桃歌ちゃん??」



「向陽君?……」



「うん。あのさ…葉瑠夏から、桃歌ちゃん、話を聞いたんだよね?ビックリさせちゃっただろうなって……。大丈夫?」



向陽君はゆっくりとした口調で、



あたしに優しく問い掛ける。



「……うん」



「……驚いただろっ??ゴメンね。俺…まさか桃歌ちゃんと葉瑠夏が……」



「もういいの!それ以上言わないで!!もう……」



もう聞きたくない。



ただそれだけ。



あたしは必死に涙をこらえる。



「ゴメン…ホントにゴメンね。こんな風に、桃歌ちゃんを巻き込んで……」



「いいの。葉瑠夏君を好きになったのはあたし。向陽君が謝ることじゃないよ…」



「なんて説明したらいいか…よく分からないけど……あいつ、葉瑠夏はもう何年も前から俺にとっては弟って感じなんだよ。妹じゃない…弟なんだ。あいつはあいつなりに悩んで、苦しんで、それでも自分に正直な生き方を選んだんだ…あいつらしいよ。そういうところは…」



「向陽君、あたし…どうしたらいい?葉瑠夏君がっ…好きなのっ……でも葉瑠夏君が女の子なんて…そんなの…そんなのって……」

我慢していた想い、そして涙……。

一度流れ出た涙は、あたしの想いとともに、溢れ出す。

電話の向こうの向陽君は、黙ってあたしの言葉に耳を傾けてくれる。

「あたし…信じたくないっ…信じられない……初めてなの…こんな気持ち。大好きなの…なのに、なのに…」
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