せんせいは15才
◆4◆

矛盾

「おー黒崎。


今日もがんばるねえ」



夜間工事現場。


バイト仲間のヤスだ。



「…金持ちになりてえな。はやく俺もバンドでデビューしてミリオン…」


「…夢は大きい方がいいですからね」


黒崎は事務所で作業着にきがえながら、ヤスに答えた。



「若いわりに、キミは夢ないのね」



ヤスはつまらなそうに現場へ出ていった。



夢…



夢はあるのだ。



自分で、自分の「身寄り」をつくることだ。



もう、こんな孤独は嫌だーーー


仕事なんてなんでもいい、○○になりたいなんて、贅沢なことは言わない



でも…



孤独だけは嫌だ…



黒崎は現場にでて、いつも通り仕事をし始めた



重い金属を運びながら、考えていたのは、
かずいの学習プランについてだった。



三週間経過し、


今日目に見えて伸びを実感した。


そのときは嬉しかった…



自分が相手の役に立てたような気がして



今まで、



どれだけ辛い仕事をしても誰のためなのかわからなかった


金だけのためだった



でも



今のこの家庭教師は



誰かのためになっている…


家庭教師をしている時間は


かずいのために自分のちからをかす



それは



孤独を忘れる



唯一の時間だった
< 53 / 82 >

この作品をシェア

pagetop