幸せ色の贈り物
「いきなり大声で名前呼ばないで下さぁい。」
「いきなり違うとこに意識飛ばさないで下さぁい。」
あたしの小さな反撃に少しのダメージも受けず、エレナはあっさりととどめをさしてきた。
「ちょっとは優しくしてよぉ〜。今日のあたしのHP、マジで10なんだからぁ。」
「HP?何それ。てか10って…」
低っ!
そう言って鼻で笑ったエレナに、あたしは今度こそ完璧にとどめをさされた。
「そんなこと言ったってエレナだって彼氏いないじゃん…」
残り僅かなHPで反撃!
しようとするものの…
「うわっ、声小さっ。」
ついつい弱きになってしまう。
そして…
「てか彼氏って。そんな話題まで出してきて…。
あんた、とどめさされたいわけ?」
どうやらまだとどめをさしてはいなかったらしいエレナ。
そんなこと言われなくともあたしはもう無理ですっ…
無言の訴えに、エレナははぁっと呆れたようにため息をつくと、今度はふっと優しく微笑んだ。
「今日、どこ行こっか?あたし、一人だし。付き合ってくれるよね?」
「しょうがないから付き合ってあげる。」
そう言うとあたしも笑う。
それが、毎年クリスマスイブに交わされる、あたしとエレナのやりとり。
何だかんだ言いつつ、エレナは優しい。
あたしをちゃんとわかってくれてる。
「ありが…」
「何かそれムカつくわぁ!」
あたしの言葉を難なく遮るエレナのデカい声。
ありがとう。
そう言わせてはくれなかった。
「超上から目線!チーズのくせして。」
そう言って顔を歪めるエレナは、さっきの優しさが嘘のようにすっかり毒舌マシーンに戻っていた。