ツンデレラは王子の夢を見る
いつかの自分が言いました。
きっと、彼が自分と付き合ってくれてるのは同情からなのだと。
ボランティアの一種なのではないかと。
(…でも、それでもいいや)
彼に好きになってもらえる要素など、持ち合わせていない自分です。
自分と付き合うことで、彼の庇護欲が満たされるなら。
彼の役に立つことが、麻尋だってできるのです。
(それだけでも、嬉しい)
麻尋は、走っていました。
目的地は愛しい王子の元。
追いかけられるのが、本物のお姫様の役目なら、麻尋は追いかけるので充分です。
(…走れ、)
好きだ。
(止まるな、)
ずっと見てた。
(追いかけろ、)
王子を好きな気持ちは、誰にも負けないよ。
一目惚れの存在を教えてくれた君。
息もできなくなる程の恋を私にさせてくれた君。
大好きなんだもん。
簡単には、手放さないよ。
馬車はいらない。
ツンデレラには、自分で王子を追いかけるだけの足があるから。
次は王子に知ってもらうんだ。
ツンデレラが、どれだけ王子のことが好きなのか。
擦り切れていくローファーに、なんだか彼との距離が縮まっていくみたいで、麻尋は静かに微笑んだのです。
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