ツンデレラは王子の夢を見る



一瞬、譲の目が丸くなるのを麻尋は見逃しませんでした。




「…桐谷」



ぎゅうっと胸が締め付けられるようなこの感じ。


麻尋は、この感覚が好きでした。




「…どしたの?」


(城市くんこそ、どうしたの)



譲の表情にはいつもの明るさがなく、どこか悲しそうでした。



(ごめんね…そんな顔させて、ごめんね)



何を言えばいいのか分からない。


言いたいことはたくさんあるのに、麻尋の口は動こうとしてくれません。




(あのね、好きなんだ)


「…桐谷?」



(ほんとにほんとに大好きなんだ)




握りしめた拳に、ぎりぎりと爪が食い込んでいきます。



「桐谷、大丈夫か?」


「…ごめ、んねっ!」


「は?」




どうして謝罪の言葉が出てきたのか、麻尋にもよく分かりませんでした。


いきなりの謝罪に、譲もびっくりしています。




「……楽しくないんじゃなくて、あの…だから、緊張して…上手く喋れなくて…」


「ちょっと待って…何の話?」


「その……ほんとはすごい嬉しくて、プリントの時とかも、優しいなって思ってて…」




頭が熱くて、ふらふらします。


麻尋の頭は、すでに容量がギリギリでパンクしそうな状態でした。



何を言っているのか分からない。


でも、伝えなきゃ。



とりあえず、今の自分がわかっていることを、この人に伝えたい。




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