ツンデレラは王子の夢を見る



ずっと好きだった人。


初めて見た瞬間から、自分は彼に惹かれているのだ。



彼からもらうものなら、痛みでも切なさでも麻尋は嬉しいのです。




「………、き」



どくんどくん、と心臓の音。


麻尋の心拍数はどんどん早くなります。




「―…すき、」




ああ、そうなのか。


(人に気持ちを伝えるというのは、こんなにも勇気のいることなのか、)




唇が乾きます。


じんわりと手の平は、少し汗ばんでいました。




「ほんとは…大好きなんだもん!だから―…」



(もういいなんて、言わないで)



好きだと言葉に出すのは、とっても恥ずかしいこと。


それでいて、気持ちのいいこと。




「…桐谷、」


「…すきです、大好きなんです」


「……だから」


「ほんとは、すっごく嬉しかったんだよ」




(…ねぇ、王子様)



私を見て。


ほんとはいつだって、素直になりたいの。



私には、ガラスの靴も綺麗なドレスもないけれど。



(―…やっぱり、王子が好きなんです)




本に囲まれた部屋の中。



自分の気持ちに素直になって笑う麻尋は、王子と本たちしか知らないのです。




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