ツンデレラは王子の夢を見る



(…なんて、)



桐谷がオレを好いてるかも、なんて100%の事実ではないのだ。


ただの自分の勝手な妄想にすぎないのである。



(……譲、我慢だ)



期待した分、譲は裏切られた気分にはなりたくないのです。




「…ごめん、冗談!」


「え…?」



固まっていた表情の麻尋の目が、街灯の光を映しました。


ゆらゆら、その光の中には譲がいたのです。



「桐谷がなにしてようと、オレには関係ねーもんな!悪い!」


「あ…?」


「よし、帰るか!」




―…末期、かもしれない。


こんなにも桐谷の素直な表情が見たいなんて。



でも、譲には忘れられないのでした。




“早くみんなと仲良くなれるといいね”



おせっかいだということは分かっていたのです。


こんなことは、麻尋の問題であって彼が首をつっ込んでいいことではないと。



それでも、なんとか彼女と関わりを持ちたかった譲はおせっかいをやき続けていました。




“……うん”




恥ずかしそうに俯いた、彼女の真っ赤に染まった耳。


唇を噛みしめて、はにかんだ表情でした。




そして、譲は気付くのです。


これが桐谷麻尋の、本当の姿なのだということに。



いつも意地やプライドで隠して、公に曝すことはほとんどない本当の彼女。



それを見ることができた自分はものすごい強運の持ち主なのだ。



そして、譲は彼女のそんなギャップに惹かれてしまっているのだから。




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