ツンデレラは王子の夢を見る
思い知ればいい。
たまに見せる笑顔に、どれだけの破壊力があるのか。
不安げで弱々しい声とその表情に、オレがどれほどの魅力を感じているのか。
(―…オレにどんだけ好かれてんのか、)
譲は自分でも気付いていないのです。
彼女がどんな気持ちで自分に接しているのかということに。
麻尋の微笑んだ眼差しに映れたのが譲だけだということに。
「……見てた、」
「ん?」
麻尋の唇が、言葉を形作っていきます。
「…すきなひと、見てた」
真っ赤な顔で、少しばかり舌足らずな言葉でした。
―…すきなひと?
桐谷が見てたのは、いつもオレでしょう?
期待してもいいのだろうか。
彼女の視線を独占する自分は、彼女の好きな人なのだと自惚れてもいいのか。
(“気持ちが抑えきれなくなったら”…答えは、もうひとつだけだ、)
好きだよ、好きだ。
笑うのも、甘えるのも、デレるのも、全部オレだけにしなよ。
「―…好きだよ、オレと付き合ってほしいんだ」
一世一代の勝負。
運命の賭け。
譲がこの告白の結果を知るのは、あと数分後の話。
end.
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